旧石器時代、食料事情が厳しかった理由は、獲れる量もですが、食べる方法にもありました。
狩った獲物の肉を石器で解体し、果物や木の実を潰して、いずれも生のまま食べていました。
生食なので、噛みにくいのはもちろん、寄生虫や細菌が沢山いるので食中毒などの感染症のリスクと隣り合わせでした。
そこで人間は「火」を利用することを発見したのです。
きっかけは「山火事」。
焼け野原の中で、「焼けた動物」を発見しました。
その肉を食べてみると、とても柔らかく美味しかったことから、火を使って肉や木の実などを焼くという「加工技術」を習得しました。
焼くことで細菌は死滅し、感染症のリスクを減らすことができました。その為、寿命が延び、人口の拡大に寄与したとされています。
加熱で食べ物が柔らかくなると、単位時間あたりの摂取時間が多くなります。
この単位時間あたりの摂取量のことを「摂取率」と言います。
人間の胃や腸といった消化器は、元々他の動物と比べて小さいことが特徴でした。
火と出会うまでは、小さい消化器で硬い食物を消化していたため、摂取率は低かったのです。
しかし、食物を加熱すると、消化が容易になります。
例えば、生のじゃがいもの場合、体内で消化できるのは50%ほどで、残りは排泄されます。
一方、加熱したじゃがいもは95%まで消化されることが示唆されています。
人間は「加熱」という加工技術によって、病気のリスクが減り、エネルギー摂取量も増えました。
それにより運動量が増え、身体をより大きくしていきます。
「火」との出会いは、栄養状態の良い体を手に入れ、旧石器時代の繁栄に大きく寄与したのです。
旧石器時代を終え、1万年前になると農耕が発展し、人間は定住するようになります。
農業に加えて、酪農や畜産を行い、穀物だけでなく、牛乳や鳥の卵など摂取するようになりました。
このような食品の生産方法、加工技術の発展によって、炭水化物だけでなく、タンパク質、脂質という
3大栄養素を継続的に摂取できるようになり、人間の健康度はますます高まっていきます。
そして18世紀半ばから19世紀に起こった産業革命を迎えると、食品加工の技術は新たな領域に入ります。
工業科の時代には、人口の調味料や甘味料、香料、着色料、乳化剤、安定剤、保存料などを用いて
加工した食品を次々と生み出していきます。
肉はより食べやすくするため、ミンチといった加工を用い、人口調味料で味付けし、安定剤を入れることで柔らかくしました。
保存料を添加することで、生ものでも長距離の輸送が可能になります。
産業革命以後の食品加工技術は人間の寿命の延伸に大きく貢献したとされています。
1947年の日本人の平均寿命は男性50.0歳、女性は53.9歳。
2018年には男性81.2歳、女性86.9歳と約30歳以上も延びています。
この寿命の延びには様々な要因が含みますが、その中でも食品加工技術の発展が大きく寄与していると言われています。
しかし近年では、その技術が健康に悪影響を与え始めていることがわかってきました。
それが「超加工技術」です。
ポテトチップスなどのスナック菓子、アイスクリーム、砂糖入りの清涼飲料水、チョコレート、フライドポテト、ハンバーガー、ホットドック、ナゲット・・・・。
これらの食品は「美味しい、また食べたい」という人間の嗜好性の食欲を高めるように加工され、またたくまに世界中に広がりました。
なぜ、そこまで超加工食品が好まれるようになったかは、旧石器時代からから人間が好んで食べてきた糖質や脂質がふんだんに用いられているからです。
そしてそれが最近超加工食品が肥満の原因になることが示唆され、またそのメカニズムも明らかになってきました。
食事が衛生的に安全になり、美味しいものも沢山増えた現代ですが、このように悪い側面もあります。
ただ全てを否定するわけではなく、普段の食事はなるべく栄養価が高い食事をして、
たまに超加工食品を摂り、運動をすることで太らないようにすれば良いとこどりができます。
更には、ストレスを溜めることなく、心にも栄養を補給できます。
全て栄養価が高いものにするのも無理してやってたら逆に体に悪いです。
ストレスと栄養価が高いもののバランスをよく食生活をすることで、理想の体になることを目指していきましょう。